東京農業大学 総合研究所

お知らせ

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12月2日(金)生命科学研究部会 講演会 開催

東京農業大学総合研究所研究会
生命科学研究部会 講演会

    日 時:2016年12月2日(金)16:30~17:50

    会 場:東京農業大学 世田谷キャンパス 図書館7階 プレゼンテーションルーム

講演: 植物の受精学 -植物の受精失敗から学んだ3つの事実-

名古屋大学トランスフォーマティブ生命科学研究所

笠原 竜四郎 JST さきがけ研究者 

 被子植物の生殖において、雌性配偶体はユニークで必要不可欠な構造である。被子植物の有性生殖では、雄性配偶体(花粉)はおしべの葯からめしべの柱頭に付着し、花粉管を伸ばし雌性配偶体に2つの精細胞を届ける。2つの精細胞のうち1つは雌性配偶体内にある卵細胞と受精し胚になり、他の1つは中央細胞と融合し胚乳になる。この過程は重複受精と呼ばれ、被子植物の種子形成はこの過程を経て完成される。演者が米国のユタ大学で雌性配偶体の研究を始めた2002年頃は、植物の雌性配偶体に関する分子生物学的な知見は殆ど存在していなかった。そこで、逆遺伝学を用いてMYB98を同定した (Kasahara et al., 2005, Plant Cell 17)。MYB98は雌性配偶体の「助細胞」のみで発現し、かつ遺伝子破壊株は花粉管を誘引することができない唯一の遺伝子であり、世界中で今なお変異体、発現マーカー共に花粉管誘引の研究において欠かすことのできない重要な遺伝子である。MYB98は助細胞が分泌するLUREペプチドの発現を制御することから、MYB98の同定が、のちのLUREペプチドの発見にも貢献した(Okuda et al., 2009, Nature 458)。MYB98を同定した後、雌性配偶体、特に受精に関する因子を見出すべく、スクリーニングを開始した。これは、MYB98::GFPのマーカーラインを用いてスクリーニングする方法で、雄側の精細胞の異常が原因で受精することができないg21変異体を同定した。さらに、2本目の花粉管による受精が、1本目の受精欠損をバックアップしていたことが判明した。これは、「花粉管を受け入れて受精に失敗した雌性配偶体は、もはや種子は形成できない」と考えられてきた、今までの常識を覆す発見となった。(「受精リカバリーシステム」; Kasahara et al., 2012, Current Biology 22)。また、最近、花粉管内容物について新たな知見を報告した。現在まで花粉管の内容物は機能を持たないと考えられていたが、シロイヌナズナの変異体を用いて交配実験をした結果、花粉管内容物が放出された胚珠は、受精していなくても細胞分裂し、種子を肥大させることを発見した。それだけではなく、種皮や胚乳も形成することが分かり、「胚珠は受精しなければ肥大することはない」という植物界の常識を覆した。また、本研究は、花粉管誘引と受精の間で、花粉管内容物が作用する段階が存在することを明示する重要な発見となった(「POEM現象」;Kasahara et al., 2016, Science Advances 2)。今回の講演では植物生殖の基礎から応用までを皆さんとご一緒に幅広く議論していきたい。

主催 東京農業大学総合研究所研究会 生命科学研究部会 

 出席ご希望の方は、下記までご連絡下さい。
 講演が終わってからは講演者を囲んでの懇親会をカフェテリアグリーンで予定しています。

バイオサイエンス学科 太治輝昭(t3teruak@nodai.ac.jp, 内線5155)